各国主要都市別、一般工業の月額賃金
国地域 | 都市名 | 賃金 |
---|---|---|
オーストラリア | シドニー | 3,608 |
ニュージーランド | オークランド | 2,811 |
日本 | 東京 | 2,356 |
韓国 | ソウル | 1,895 |
香港 | 香港 | 1,889 |
シンガポール | シンガポール | 1,608 |
台湾 | 台北 | 1,010 |
中国 | 北京 | 578 |
タイ | バンコク | 348 |
マレーシア | クアラルンプール | 317 |
フィリピン | マニラ | 317 |
インドネシア | ジャカルタ | 257 |
インド | ニューデリー | 245 |
パキスタン | カラチ | 185 |
ベトナム | ハノイ | 181 |
ラオス | ビエンチャン | 179 |
カンボジア | プノンペン | 162 |
スリランカ | コロンボ | 143 |
ミヤンマー | ヤンゴン | 127 |
バングラディッシュ | ダッカ | 100 |
ジェトロ資料より当社が作成
ベトナムの最大の魅力は人口動態だ。1960年代には3千万人台だった人口は、現在は9千万人台となり、さらに2025年には1億人を突破する(世界銀行のデータ)。しかも、労働生産年齢人口(15歳〜64歳まで)が現在、全人口の70%に達している。国民の平均年齢は約28歳と若く、1960年代の日本の状況に近い。
このように人口が増加し、若い働き手が多いベトナムは、経済の好循環が期待される。すなわち、企業収益の増加により労働者の賃金が上昇、家計の可処分所得の拡大、個人消費や住宅投資の拡大、そして企業の一段の発展につながるという良好なサイクルが想定されるのである。
世界的に少子高齢化が問題になる中、安くて優秀な労働力が確保できる国は、それだけで国際競争力が高いと言える。この観点から見ると、ベトナムの賃金は、中国の3分の1にすぎない。また、タイの約半分であり、マレーシア、フィリピン、インドネシア、そしてインドに比べてもかなり低い。一方、ベトナムは教育が行き届いているうえに、若い労働者が多い。優秀で豊富な労働力が低いコストで調達できるベトナムは、世界の工場となる要素があふれている。
実際、サムスン電子はベトナムに工場を作り、スマートフォンを生産、輸出している。米インテルは10億ドル(約1000億円)をベトナムに投じて、半導体チップの工場を建設した。貿易統計を見ても、携帯電話やコンピューターが輸出品の上位に並ぶ。もはや、世界におけるIT製造工場といった様相である。
各国主要都市別、一般工業の月額賃金
国地域 | 都市名 | 賃金 |
---|---|---|
オーストラリア | シドニー | 3,608 |
ニュージーランド | オークランド | 2,811 |
日本 | 東京 | 2,356 |
韓国 | ソウル | 1,895 |
香港 | 香港 | 1,889 |
シンガポール | シンガポール | 1,608 |
台湾 | 台北 | 1,010 |
中国 | 北京 | 578 |
タイ | バンコク | 348 |
マレーシア | クアラルンプール | 317 |
フィリピン | マニラ | 317 |
インドネシア | ジャカルタ | 257 |
インド | ニューデリー | 245 |
パキスタン | カラチ | 185 |
ベトナム | ハノイ | 181 |
ラオス | ビエンチャン | 179 |
カンボジア | プノンペン | 162 |
スリランカ | コロンボ | 143 |
ミヤンマー | ヤンゴン | 127 |
バングラディッシュ | ダッカ | 100 |
ジェトロ資料より当社が作成
これを受けて、ベトナムの経常収支は、2011年以降は黒字に転換している。さらに、IMF(国際通貨基金)の予想では、2021年にむけて経常黒字を維持するとみられている。このように外貨が獲得できれば、物価が安定する。これは金利の低下をよび、経済成長を一段と強める要因となる。
そして、ベトナムは仏教徒が多い国であり、最も親日的な国の一つである。また、性格も温厚で、勤勉な国民性である。しかも、昔から刺繍や銀細工が盛んであることで分かるように手先が器用なことから、日系企業からの人気は高い。これまでに、キヤノン、パナソニック、ホンダ、トヨタ、富士通、日本電産、ブリヂストン、富士ゼロックス、マブチモーター、イオンなど、1553社の日系企業がベトナムに進出している。
ベトナムの人口は、7月1日時点で9,170万人(政府推計)であり、アジア地域で8番目の大きさだ。今年上半期における出生数は前年同期に比べ+9.9%増加した。ベトナムの人口密度は世界の5.2倍、アジア太平洋地域の2倍、東南アジア地域の2倍となっている。
現在ベトナムは、15~64歳の生産年齢人口がそれ以外の人口(従属人口)より多い「人口ボーナス期」にある。2012年のデータでは、生産年齢人口の占める割合が68.9%で、65歳以上の高齢者はわずか7%にすぎない。人口学の専門家によると、人口ボーナス期は各国にたった1度しか訪れないという。
若い労働者が賃金を得ると、やがて住宅を買い、家電を買い、また自動車も買うだろう。子供を育てるために教育費も使い、さらに家族とともにレジャーを楽しむはずだ。これは、1960年以降の日本の状況を想い出せば容易に想像がつく。そして、これは経済的な観点からは、内需の拡大である。このように、人口動態からみたベトナムは、経済発展が急速に進む時期に差し掛かっていると言える。
ベトナムの教育制度は、小・中学校の9年間は義務教育である。小学校に入学する年齢は、日本と同じ6歳である。小学校5年間、中学校4年間、高等学校3年間の12年制がとられている。教師のほとんどは、教育系の大学を卒業しており、大学院を卒業している教員も少なくない。ハノイの有名私立小学校の例を挙げると、授業は月曜から金曜日まであり、始業は午前7時30分で終業は午後4時である。学校では給食として、朝食と昼食を用意。制服もある。選択科目として、パソコンを使ったITの授業もある。また、日本などの海外の学校を訪問する研修プログラムもある。
この教育制度の充実により、15歳以上の識字率は94.7%(2014年)と、途上国の中では突出して高い数字だ。なお、ベトナムは日本に対する関心も年々高くなっており、日本語を学ぶベトナム人は4万人以上と言われている。ハノイ、ホーチミンを含む5地域の中学校・高等学校では、日本語を学習しているクラスもある。
1986年の第6回党大会において、ドイモイ(刷新)路線が決まった。これは、市場経済システムの導入と対外開放化を促す政策だ。その成果として、1995年~1996年には9%台の経済成長率を記録した。その後、アジア経済危機で成長は一時鈍化したものの、海外直接投資の順調な増加も受けて、2000年~2010年の平均経済成長率は7.26%と高成長を達成した。
2011年以降も5%以上の経済成長を維持。2013年以降は加速して、2015年の成長率は6.68%だった。インフレが抑制されていることも、安定的な経済成長に寄与している。IMFの予想でも、2021年に向けて6%の成長率を維持するとともに、インフレ率は4%程度に抑えられるとみられている。
さらに、ベトナム政府は、高い経済成長を将来にわたり維持するために、市場経済化と国際協調を推進している。1995年には、米国との国交を正常化させた。その後も、各国・地域とのFTA(自由貿易協定)/EPA(経済連携協定)の締結を進めている。
1995年にASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟。1998年にはAPEC(アジア太平洋経済協力)に正式参加し、2006年にAPEC議長国を務めた。2007年、WTO(世界貿易機関)に正式加盟。2008年には、国連安全保障理事会非常任理事国(任期2008年~2009年)、2010年にはASEAN議長国となった。2013年に国連人権理事会理事国(任期2014~2016年)に選出された。そして、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)にも参加している。
ところで、ベトナムは現在でも、世界有数の農業大国である。食糧自給率が非常に高いことで、貿易収支の悪化を回避することができる。それにとどまらず、2014年以降は、世界第2位のコメの輸出国にもなっており、胡椒とともに、農作物は外貨を稼ぐ重要な戦略物資だ。
実は、コーヒー豆の輸出についても、ブラジルに次いで世界第2位である。また、アフリカでは主食であるキャッサバ(タピオカ)の生産も世界有数。そこから抽出されるデンプンを使って、ベトナムではバイオエタノール燃料も生産されている。
さらに、天然ゴムは世界第3位の生産量。加えて、南シナ海にある油田で採掘された原油は、日本やアメリカに輸出されている。天然ガスや石炭、鉄鉱石、ボーキサイト、スズ、金、銅、鉛なども産出され、資源開発はベトナムのGDPの1割近くを占めている。
したがって、ベトナム政府が進めている自由貿易協定(FTAやTPPなど)は、ベトナムの工業製品だけでなく、農産物の輸出にも追い風となり、外貨獲得に資するとみられる。
2015 年の経済成長率は 6.68%増だった。これは、直近 8 年間で最高水準であり、またベトナム政府の目標(6.2%)を上回っており、ベトナム経済が回復基調あることが確認された。
この高水準の経済成長は、外国資本を中心とした製造業(対前年比 10.6%増)が牽引した。また、個人消費も対前年比 8.4%増であり、内需も順調に拡大している。
政府は、2016 年の経済成長率については6.7%を目標としている。そのうえで、今後 5 年間は、年平均6.6-7%の経済成長率を維持することで、2020 年には1人当たり GDP が 3,200-3,500 ドルに到達することを目標としている(2015 年の1人当たり GDP は 2,109 ドル)。 なお、一般に1人当たりGDPが3,000ドルに乗せれば、自動車(マイカー)が普及し始めるなど、本格的な消費文化が始まると見られている。
一方、昨年のインフレ率(消費者物価指数の前年比)は、年平均+0.63%となり、直近 14 年間で最も低い水準に抑制され、政府目標(5%以下)は達成された。
インフレ抑制の背景は、2014 年以降から続く国際的な原油価格の下落がある。また、国際商品価格の下落と、国内の農作物の豊作による食品の供給増加も、インフレ抑制につながった。
インフレ率が低下したことで、商業銀行の貸出金利は引き下げられた。その結果、銀行貸出残高の増加率は前年比で約17%増となり、ここでも政府目標(13-15%増)が達成された。
2016年も、ベトナム経済は順調に推移している。7-9月期の経済成長率は前年同期比6.4%増(4-6月期は5.8%増)と加速した。これにより、1-9月期では同5.9%増となった。海外からの投資や、輸出の拡大が寄与した。
一方、10月のインフレ率は、原油価格の回復にともなう一次産品の上昇などにより、4.09%とやや強含んでいる。それでも、ここまでは政府目標(5.0%以下)を達成している。
株式相場(ベトナムVN指数)は、2011年に27%下落したのちは、昨年まで4年連続で上昇した。また、今年も11月3日までに15%上昇しており、2007年以来の高水準にある。
その背景には、高い経済成長と比較的低いインフレ率というファンダメンタルズの良さがある。それに加えて、市場改革の影響も大きいだろう。
ベトナム政府は昨年、外資の参入規制を大幅に緩和した。TPPへの参加をにらみ、外資が活動しやすい環境を整備するためだ。
規制が緩和されるまでは、政府は外国人の不動産所有を認めていなかった。しかし、昨年の規制緩和により、外国企業、投資ファンド、ビザを持つ外国人が土地や建物を50年間所有できるようになった。さらに50年間延長でき、最大で100年にわたって持ち続けることが可能だ。集合住宅の場合は総戸数の30%までに保有を制限する。
また、上場企業への出資規制も撤廃された。上場企業が株主総会で外資の持ち株比率制限を変えることができるようになったことから、会社の決定次第で外資の100%保有さえ可能となった。ただし、銀行への出資比率は30%以下に義務付けられるなど、政府の一定の管理が必要な業種は、この規制緩和からは除外される。
このような規制緩和を受けて、ベトナムへの投資タイミングを待っていた外資の参入が期待されることも、株価の上昇につながっている。
ベトナムにおいては、中国と同様に管理フロート制が採用され、ベトナム中央銀行が介入し為替レートを一定の水準に保っている。
ここで管理フロート制とは、為替相場を決定するための制度の一つで、自国の通貨の変動幅を固定し、その幅の範囲内で各国通貨が自由に取引される制度のことである。通貨の変動幅は、ベトナム中央銀行によって管理される。
現状は、毎日、中央銀行のウェブサイトに米ドルをベトナムドンに換算する中心レートが公示される。また、毎週木曜日には、他の通貨についても、米ドルを介してベトナムドンに換算するクロス為替レートが公示される。
為替相場の動向は、2015 年は米国の利上げ観測から、ベトナム政府は 1 月、5 月、8 月に、それぞれ対ドル公定レートを1%切り下げ(8月は取引バンドの上限を1%→3%に拡大した)、実質5%切下げという為替調整を行った。
そして、2016年1月より、ベトナム政府は公定レートを日々小幅に変動させる政策を導入している。2016 年 10月末現在、1 ドル=22,300ドン前後で推移している。
2015 年の対ベトナム直接投資額は、前年比 10.0%増の約 245.1 億ドルとなった。製造業が全体の 7 割以上(金額ベース)を占めている。
主な投資元国・地域は、韓国が69.8 億ドルで第1位、マレーシアが 24.8億ドルで第2 位、そして日本は 18.0億ドルで第3位だった。
この旺盛なベトナム進出は、外資規制の緩和が寄与している。とりわけ、小売業や物流業関連の認可件数が対前年比で増加するなど、生産拠点としてのベトナムとしてだけではなく、マーケットとしてのベトナムに着目した直接投資が目立った。
なお、2015 年の超大型案件は次のとおり。